2017.07.03 西表島で休日を(その3)




■ ウ離島を見ながらさらに進む




さて由布島を後にしてさらにバスは進んでいく。低湿地であった由布島の近傍を離れると水田は見えなくなり、牧草地が散見されるようになる。西表島は河川のあるところはマングローブ林でジャングルみたいになるけれども、水のない台地部分では牛の放牧が行われている。

・・・といっても島のほぼ全域が国立公園なので、こういう人の手の入ったところは全体の数%くらいの面積に過ぎない。放牧も成牛を放している訳ではなく、子牛を生産してそれを本土の肥育農家に出荷するパートタイム畜産みたいなことをやっている。

余談になるが牛(特に肉牛)は子供のうちは暖かい気候のほうがよく育ち、ある程度大きくなると低温のほうが肥育がうまくいく。西表島は亜熱帯の島なので子牛の生産に有利であり、これが当たっていまではサトウキビより割の良い収入になっているそうだ。




そんな風景を眺めていると、ふと沖合の海の色が変化したことに気づいた。大きな河川のないエリアに入ったためか、海の濁り具合が少なくなっているような気がする。少なくとも泥水色ではなくなっている。




ウ離島(うはなりじま)の見える野原崎付近に来ると、八重山の島々をつなぐ浅い海から外れて外洋に面したリーフ外延部が見えるようになる。




そこから北側は、沖縄の他の島々と類似した明るいエメラルド色+サンゴ砂の海となっていた。おお・・・こんなに劇的に風景画変わるとは。




■ 西表島温泉




やがてそんな海辺の一角にある西表温泉にバスは立ち寄った。予定表ではここで昼食をとることになっている。




これが西表島温泉である。ホテルを兼ねた観光施設で、筆者が訪れた時点では日本最南端の温泉であった。




訪れた時点では・・・と但し書きをつけたのは実はその後温泉としての営業を止めてしまったからで、現時点(2017)では日本最南端の温泉は宮古島にある。弾丸バスツアーではゆっくりと入浴している時間はなく、筆者としても少々心残りなところがあったが・・・まあこればかりは民間企業の経営判断なので仕方がない。




ここでは昼食&一服。

腹が減っていたので料理の写真を撮りそびれてしまったが、まあそこはそれ(^^;)。暑いので麦茶の飲み放題がナニゲにありがたかった。




ちなみにこの施設ではジャングルのナイトツアーを実施しており、掲示板をみると月に3回くらいのペースでイリオモテヤマネコに遭遇しているらしい。推定生息数100頭ともいわれる個体数からすると一時間のお手軽ツアーにしては結構な成績のような気がするが、毎回必ず見られるわけではないことには留意したい。その代わりヤシガニやオカヤドカリ、蛍、ウミガメなどにはよく遭遇するそうだ。




・・・ということで、腹ごしらえが済んだら弾丸ツアーはさらに進んでいく。

ホント、忙しいねぇ( ̄▽ ̄;)




■ 上原




さて昼食後は西表島の北辺の海を見ながら海岸沿いを走ることになる。このあたりの海は外洋に面しているのですこぶる美しい。




途中、「滝が見えますヨ〜」 とアナウンスがあったので目をこらしてみる。




おお確かに滝が見える。名前は良くわからないけれどもジャングルツアーであそこの滝壺を見に行くコースがあるそうで、健脚向きの観光スポットらしい。

ツアー参加者は一斉にカメラを向けて臨時の撮影ラッシュとなった。ただしスマホ組の方々は全然倍率が稼げないうえに手ブレの嵐のようで 「写らね〜」 との恨み節もちらほら。こういうときはデジ一眼は圧倒的に強い。・・・そりゃ専用機だものねぇ(^^;)




やがて地番の上では上原(港のある地区)になる領域に入り、バスは長大な橋を渡った。




ここは船浦橋といい、西表島の外周をまわる県道215号線の最後の難関工事区間だったところである。この橋が開通(昭和51年)する前は西表島の道路は東西で分断されており、船で往来するしかなかった。

橋はナダラ川、西田川、ヒナイ川、マーレ川といった河川が注ぐ船浦湾をショートカットする形になっている。湾の奥は広大な湿地帯で、21世に入っても道路は通じていない。




湾内はこんな感じで、川の運んでくる泥とそれを養分に増殖するプランクトンで海の色はやや濁り気味になっている。浅い砂地の湾なので水が透明であればエメラルドグリーンが綺麗に出る筈なのだが、そうはなっていない(^^;)




こちらは湾の奥の方。マングローブとヤシの混成林が広がり、海はなんともいえない "西表色" を呈している。

ふむ…この景色を見ていると、なんとなく西表島の景観の法則とでもいうべきものが見えてくるような気がするな。マングローブがあるかないかで海の様相は一変し、特に河口付近は混濁して黄褐色に染まる。それが沖にむかって徐々に薄れてきて、やがて青くなっていく。おそらく上空から見れば、島を包む濁りのオーラのようなものがみえることだろう。




やがて橋を渡りきり、バスは湾の外延部にある船浦港をかすめていく。外洋にちかい部分では海の色も青くなる。ざっと目測するとマングローブ林から1kmくらい沖合に出ると濁りが消えて青みが出てくるらしい。

この付近は琉球王朝時代に港があったところで、港部分を船浦、後背地のちょっと高台になったところを上原と称した。現在はこの上原地区の北岸にある上原港が島の玄関口となっており、船浦港は小型漁船の基地として使われている。




こちらが上原港である。外洋に面した砂地の浅い入り江を防波堤で囲んでいる。観光客にウケる海の色は圧倒的にこちらである。帰路の連絡船はここから出航することになっている。




ツアーはまだ続くので、いったん港はスルーしてバスは島の最北端:ニシ崎を目指していった。

途中、パイナップル畑が広がっている畑作地を過ぎる。そういえば西表産のパイナップルは沖縄本島よりも糖度が高いと聞いたけれど、残念ながら食べる機会はなかったな。…まあ、弾丸ツアーだから仕方がないか(^^;)



 

■ 星砂の浜




やがてニシ崎に面した西表島北端の海岸に到着した。

ここではいわゆる "星砂" が見られる。筆者はさっぱり知らなかったのだが、ここは沖縄の島々の中でもかなり有名な星砂の産地であるらしい。




立地はこんな感じのところで、高さ20mほどの断崖を降りると東西700mほどにわたって続く白い浜に出る。人によってはここを目標に西表島に来るくらいの場所だという。




ともかく降りて行ってみよう。




浜の様子はこんな感じで、サンゴ礁のリーフ内に5つの大きな岩礁があり、岩礁と浜の間が水深1m未満の浅瀬になっている。この浅い海に有孔虫が大量に生息していて、その死骸(殻)が積もり積もって浜になった。この有孔虫の殻が "星砂" の正体である。




見れば、おお・・・たしかに星の形をしているな。大きさは直径1〜2mmといったところか。




顕微鏡で拡大すると星砂はこんな形になっている。

有孔虫の殻そのものは他の島でも見ることができるが、浜全体がほぼ100%星砂でできている場所は極めて少ない。星砂は古いものは角がとれてしまっているけれども、新しいものはトゲトゲが残り、少々過激な森永おっとっとのような外観を示す(なんだその説明は ^^;)。




この有孔虫というのは肉眼で見える大きさながら単細胞生物で、分類上はアメーバの親戚みたいなものらしい。細胞壁にあたる部分が固い殻になっていて、生きている時には中に原形質の本体が入っている。餌は海藻片などを食べ、でありながら殻の中には珪藻が共生していて光合成を行い、そのエネルギーもちゃっかりと頂いているという不思議な生き物だ。

それが寿命を迎えると、原形質の部分が分解されて殻だけが海中を漂い、やがて海岸に打ちあげられて砂浜のような景観をかたちづくるのである。

※写真はWikipediaのフリー素材を引用




この星砂海岸は、有孔虫の生息に適した浅い海と、ちょうどその死骸が吹き溜まりやすい地形が両立して、特に星砂の多い浜となった。こういう場所は、西表島の星砂の浜以外では、竹富島のカイジ浜が知られるくらいで大変に貴重なものであるらしい。




さて話し声が聞こえてきたので振り返ると、もう一台別のバスがやってきたようだ。ツアー客がぱらぱらと降りてきては歓声をあげる。

・・・ということは、ここってやはり有名なところだったんだな(ぉぃ ^^;)




・・・といっても、星砂を確認したらここではもう他にすることはない。




浅瀬にいる魚と、まだ生きている有孔虫(→砂みたいに見えるもの)をちょいと眺めるか・・・




水着と水中カメラを用意してきた人はシュノーケリングに興じるか・・・まあ、そんなところだ。




筆者は、本日のツアーの時間割の中で、このときはじめて 「暇だ感」 に満たされた(笑)

実をいえばこの星砂の浜はロマン派の女子旅などではかなり人気のスポットである。しかし筆者は何の予備知識もなく(ついでに主体性もなく:笑)流されるようにここに至っているので 「へ〜そうなんだ〜」 というくらいの感覚でしか見ていない。そういう意味では世間で認められている価値に対して、少々勿体ない過ごし方をしてしまったのかもしれない。

…が、それは後追いの感想であって、このときはゆるゆると広がる浜でのんびりとした時間を過ごして筆者はそれなりに満足していた。別になにかのスコアを競っているわけではないのだから、こんな過ごし方があったって悪くはないだろう。


<つづく>