2012.04.29 那須野のGWの見どころを眺める (その3)




■余笹川公園


 
安愚楽牧場跡を出てからは、一路 r68 を北上する。

いつのまにか、またもや道路の拡張工事が進展している。個人的にはこちら方面はあまり切った張ったしないで残しておいて欲しいところなんだけどなぁ…(´・ω・`)




やがて、r68 は余笹川公園を掠める。洪水防止の堰堤の脇に駐車場があるだけ…というシンプルな場所なのだが、視界の通るポイントなのでちょこっと寄ってみよう。




ここは河床の勾配が大きい急流河川で、雨が降ると急激に増水することが多い。1998年には豪雨によって大規模な洪水を引き起し、のちに災害対策として幾重にも堰堤がつくられた。奥に見える壁のような構造がそれである。水を溜めるものではなく急流の勢いを削ぐのが目的なので、堰堤は大きなスリットが入った独特の形状をしている。

洪水直後=14年前にはむき出しの石原となっていた河原には、いまでは柳の若木が根を張りつつある。柳は河原などの荒地に最も早期に進出する樹木の一種で、他の落葉樹に比べて芽吹きが早いので早春には雪山をバックに鮮やかな緑色を見せる。ここはちょうど具合よく役者がそろって、なおかつ堰堤の存在がチャームポイントとなっていて、ちょっとしたドライブ休憩をとるには良い場所といえる。




川原には桜も咲いていたので、朝日岳の前景に頂いて1枚。これで脚立でもあればもう少し気の効いた構図に出来そうな気もするけれど…まあいいか(^^;)



 

■大島丘陵~県境付近




さて、その後はさらに進んで大島丘陵のあたりに出た。この付近は那須でもっとも広々感のあるゆるやかな起伏が連続するところだ。

近くにある那須フラワーワールドは、まだ開花状況がいまひとつで開園していなかった。毎度毎度ながらGWの掻き入れ時を逃していて、この施設は大丈夫なんだろうか…と他人事ながら心配になる(^^;)

それはともかく、牧草地のひろびろ感を目指していつもの場所を目指してみよう。


 
最近は道路工事があちこちで進行していて、せっかくの緑の丘陵も寸断され気味だが、それでもこの付近では映画に出てきそうな風景を堪能することができる。お金をかけずに高原の風景を眺めるには非常に良いところなのだ。


 
 …と、思っていたら工事中の切り通しに遭遇した。やれやれ、ここも道路になるのか…いや、除染作業で出た牧草やら表土やらの埋設処理用だったりして(謎)

すっぱりと切り取られた法面(のりめん)を見ると、火山灰に由来するといわれるローム(赤土)の上に30cmほどの黒土が載っているのが見える。これが植物の育つ腐葉土の層らしい。形成に何万年かかったのか知らないけれども、案外薄いのだな…



そんな道路沿いから、山をみてみた。このあたりは、戦後に復員してきた人々が食うや食わずで開墾に入ったところで、土が痩せて水も得にくい地勢であったことから、水田はつくられず、酪農地帯となった。

那須街道の周辺が観光開発されて商業化していった高度経済成長期にも、ここは酪農一本でやってきて、この景観が保たれている。こういうところは、下手に開発の手は入れないでうまく保存してほしいと筆者は思う。



さて先月にもやってきた同じ場所で、今日何度目だ? とツッコミを受けかねないのだが(笑)、コーヒー休憩でマターリしてみた。…少し薄雲が出てきたようだが、それでもまだ天気は良い。

クルマのエンジンを止めて外に出ると、遠くで鳥のさえずりが聞こえるばかりの実に平和な音空間…。なーんにもしないでゴロ寝で過ごしたら、最高のぐうたら休日が過ごせそうだな。



実はこのとき、ひろびろ丘には先客が一人居た。絵描きさんである。

氏はここから見える風景を水彩画に起している最中であった。そういえば、先ほど訪れた安愚楽牧場跡でも、5、6人のパーティがスケッチをしていたな…

最近は水彩スケッチがブームなのか、あちこちで画板片手の人を見かける。暇人が増えるのは平和の象徴のようなものだから、まことに結構なことである。…というか、筆者も暇が欲しい(笑)



さて大島からは、幹線道路である r305 を意図的に外して、脇道を縫いながら那須山塊を目指してふらふらしてみる。ここまで来ればもう特定の目的地というのはなく、流しモードのようなものだ。時間はまだ午後1時少々…まあ、ゆっくりと行ってみよう。



防風林の列をところどころに挟みながら、牧草地が延々と続いていく。



r305からも広々感のある景色はそれなりに見えるのだが、こちらには邪魔な電柱が一切無いのでナチュラル感は半端ではない。窓は全開にして、風を受けながらゆるゆると行く。



観光渋滞に巻き込まれながら商業施設を渡り歩くのもまあ悪いとは思わないけれど、本物の高原の風景というのは、きっとこういうものを言うのだろう。

驚くべきことに、この日、筆者はこの道を走っていて、たった1台のクルマとしかすれ違わなかった。ゴールデンウィークの晴れの日に、ほとんど一人で景色を独占しているようなものだ。場所による行楽客の粗密具合の差というのは斯くも凄まじいものなのか…w



風景を見たい人、買い物をしたい人、行楽施設に入りたい人…それぞれに行き先というのは違ってくるとは思うけれど、実は風景を見たい人というのは案外少なくて 「私はお金を使いたいのだ!」 という人が多いのだろうか。…だとすれば観光地としては良いお客様ということになるんだけど…いったい、どうなんだろう(^^;)



さてゆるゆると走っているうちに、混雑施設であるどうぶつ王国付近までやってきてしまった。時刻を見るとまだ午後2時前。…まあ少々早い時間帯だけれど、このへんで帰投フェーズにはいろう。

朝の出発時刻が8:30頃だから本日ここまでの所要時間は5時間にも満たないのだが、渋滞を避けつつこれだけ見て回ることが出来るのだから、やはりコース選定というのは重要だな…(^^;)




■帰路




帰路は、やはりふらふらと脇道を縫いながらゆるゆると進んだ。途中、栃木県と福島県の境界となっている黒川を見る。こんな小川みたいな流れだが、これでも立派な県境である。

余談になるが栃木県、福島県の県境とはすなわち那須国と陸奥国の国境であり、その起源は古く飛鳥時代に定まったものだ。当時は自然国境の概念で、山脈とか、河川のような目に見えてわかる境界をもって国境とした。ここでは黒川が、また境の明神から東側では河川の分水嶺をもって国境が定められた。…そういう雑学を知っていると、地図を見るのも面白くなってくる。



r305を敢えて避けて、南側の北沢方面に抜ける途中の牧草地。農作業と雪山がイイカンジなので撮ってみた。


こちらは牧草に混ざって繁茂するタンポポの群生。除染が本格化すると表土と一緒に処分されてしまうかもしれないけれど、精一杯短い春に花を咲かせていた。



いずれにしても、平和で平穏な春であって欲しいものだな…(´・ω・`)

…ということで、今回はここまで♪

<完>




■おまけ:翌4/30の状況


…おまけです(´・ω・`)ノ



実は翌日早朝、ちょこっと茶臼岳に登ってきた。これは午前5時半頃の那須野ヶ原方面。湯元の展望台から見ているのだが、一面の朝霧が雲海のように広がっていた。これは見事だ。




雲海の先端は、湯元温泉街の目の前まで来ている。標高にしておよそ800mのラインだ。こうしてみると、霧と雲というのは高さが違うだけで本質的には一緒のもの…ということがわかる。




そのままロープウェイの営業開始を待って、始発で登ってみた。この残雪をちょこっと見てみたかった…というものなので、すぐに降りてしまったのだが(^^;)




ちなみに降りる直前、午前7:50頃には温泉街方面はこんな状況になっていた。朝霧がそのまま高度を上げて雲海になっている。空気の流れがほとんどないまま気温が上がると、こんなことになるんだな…と思いつつ、ちょっとばかり関心してしまった。

…気象現象というのは、理屈で学ぶよりも目で見て納得したほうが理解が早い。こうしてみると、山というのは偉大なる自然科学の教室のような気がするヽ(´ー`)ノ


<おしまい>