■ 2005.12.04 秘湯:赤滝鉱泉 (その2)







みれば湯屋から煙がでている。 ここは冷たい鉱泉を薪で沸かしているのである。




この周囲は赤滝鉱泉所有の山林だそうで、薪はいわば自己調達だ。




建物に上がらせていただくと、黒光りする廊下と階段が現れた。あちこち改修はしてあるものの築200年を超える家屋だ。21世紀の世の中にこんな建物が残っているなんて奇跡的だな。




ここには土産物屋も、喫茶店も、自動販売機もない、本当に風呂に入って部屋でくつろぐだけ。ある意味、究極の湯治場といえる。

この日の客は、老夫婦が一組だけ。「お泊りですか?」 と聞かれたのでお風呂だけ頂きに参りまして…と答え、しばし雑談をした。 聞けばもう一週間ほどここで過ごしているという。季節ごとに1、2週間単位で来ているとのことで、もう完全に湯治スタイルの滞在だ。 リタイア組だからというのもあるだろうが、時間をたっぷり使えるというのは現代にあってはこのうえもない贅沢だな。




さて奥へ進んでここが脱衣場である。なんと火鉢が置いてある。それも飾りではなく本当に使われている。年季の入ったいい火鉢だ。




鉱泉の浴槽は石造りで、せいぜい2人くらいしか入れそうにない小ぢんまりとしたサイズだ。男女の区別はなく、先に入った順に交代で入浴する。




写真では湯気で白っぽくみえているが、お湯の色は赤みが強い。バルブをひねると透明な鉱泉が湯船に注ぐ。pH3とかなりの酸性で、どうやら沸かすと色がつくらしい。このまま肩まで浸かってマターリと湯を愉しんだ。パチパチと燃える薪の香りが漂っていて、非常にエコロジカルな気分になる。薪の風呂なんて何年振りだろう。




窓をあけると、枯葉色の紅葉にちらほらと雪が舞いはじめていた。




十分温まって風呂をあがると、赤滝小唄なる張り紙があることに気がついた。TVもネットもラジオもない時代、広告代わりになったのがこういう歌らしい。こういうものが残っているのもまた歴史のうちなのかね。


<つづく>